高麗人参はじめ漢方卸の責任
原料問屋ゑびやの主な業務に、素材の選定という大切な仕事があります。
この選定で最も重視していることは、高麗人参というだけでなく、
どのように栽培された高麗人参かなど、安全性や品質の裏づけとなる生産情報です。
そのため現地農家や法人から提示される情報以外に、土壌、肥料、水、栽培方法や期間、
さらにはその人までをつぶさに知った上で、納得したものだけを仕入れています。
しかしその過程で先方様より、調査のためのヒヤリングに間違えられることもしばしば、
取り引きをお断りされてしまうケースも珍しくございません。
漢方卸が素材の品質を大切に考える、本来は当然のこと。
声高に謳うことではないとも存じますが、
私どもの最大の強みであり、自負でございます。
漢方卸として培った経験と見識、また現地との信頼関係、
そして直に素材と知り、活きた選定基準でもって、品質を追求する。
漢方素材の卸業として「一意専心」、誠実に正道を歩む、私どもの社是です。
食品の安全性において、残留農薬の問題がようやく顕在化され始めましたが、
栽培方法などのSOP(標準作業規範)は、まだまだ立ち遅れているのが現状です。
そのため、これらの生産情報が、お客様に知らされることはあまりありませんでした。
しかしながら、高麗人参などの漢方素材は体を気遣い食するもの。
求めているのは素材の持つ本物の力です。
だからこそ、客観的にも充分な安全性が保証された素材であることはもとより、
栽培方法などの生産情報も大切であるとゑびやは考えます。
高麗人参(紅参6年根)といえども同じではない。
トレーサビリティはもとより、
どのように生産された素材であるかを大切にしてきた、
私どもの進むべき道に、「ワンランク上の品質」という、
ひとつの指標が芽生えました。
「一粒にこれだけの成分をぎゅっと凝縮」
皆さまもよく耳にするフレーズではないでしょうか。
原料問屋として不遜な考えかもしれませんが、
そういったコンセプトの製品は、極力つくって欲しくはありません。
飲みやすくするために、素材の一部の成分を取り出していますが、
本来含まれる多くの成分が抽出されずに廃棄物処理されています。
これは環境にも人にも大変“もったいない”ことです。
自然の力をいただいている私たちが、自然を無駄にしてはいけない。
漢方では、人も自然の一部という考えがあります。
私たちの祖先は、自然の素材をそのまま食すことで、自然の力を人の力に換えてきました。
今、そんな時代を懐かしく感じることがあります。
衣、食、住、
人と自然のあるべき姿を、少しだけ顧みる、
その時間と習慣が、本来の心と体を作り上げるのかもしれません。
漢方理念である、人も自然の一部という「ものづくり」
自然の産物に捨てるべきところがなし、という古くからの教え、
まずは私ども原料問屋に出来ることから。
次項、先人に学ぶあるべき姿では、
一物全体食の漢方理念、風味を感じることの大切な役割や、
昔から薬研や乳鉢で高麗人参など漢方素材を細かくすりつぶす理由など
少し古くさいお話、されど大切な漢方素材との向き合い方を、
ゑびやの想いとしてお伝えできれば幸甚です。